人が幸せに働ける組織づくりが、企業と社会を変えていく。
カンボジアで出会った光景が、私の原点


大学卒業後、一般企業勤務を経て2002年に社会保険労務士事務所を開業。2006年に株式会社エスパシオを設立。人が幸せに働き、組織として結果も出るメソッドを研究し、心理学、コーチング、東洋哲学などを学び、原田隆史氏の考案した原田メソッドにも出会う。
現在では、「組織開発×労働法」の視点で労務管理のアドバイスに留まらず、経営者のディスカッションパートナー、事業承継を伴走する「語りつなぎ🄬」、パーパス&バリューの作成などのサービスを手掛ける。一方で、一般社団法人自立した人と組織を育成する協会にて、全国の社労士の皆様に「心のマネジメント」の視点からの関与先指導の方法をお伝えしている。
 

PROFILE

代表取締役 下田直人

下田直人

特定社会保険労務士
株式会社エスパシオ 代表取締役
一般社団法人自立した人と組織を育成する協会 代表理事

ストーリー

私は28歳のとき、社会保険労務士の試験に合格し、社労士事務所を開業しました。当初、メインの業務としていたのは就業規則の作成です。

その中で、就業規則は作り方によっては従業員の就労環境の改善につながるのはもちろん、組織力の向上など経営上プラスに働くことに気づき、開業3年目に、就業規則の戦略的活用を説いた著書を出版しました。幸い多くの反響をいただき、書籍を14冊出版したり、セミナー講師として全国各地へ呼ばれたりと、社労士という仕事にやりがいを感じながら楽しく毎日を過ごしていました。
しかし同時に、社労士のメイン業務である労務管理に限界を感じ始めていました。組織を運営する上で管理は必要ですが、管理を徹底しても抜本的な解決にはならず、働く人たちにとって息苦しい職場になってしまいます。自分の仕事は、果たして働く人たちの幸せに寄与しているのだろうか、という疑問が出てきたのです。
そんなジレンマを抱えていたとき、ご縁があってカンボジアにある「伝統の森」という場所を訪れる機会がありました。そこはポルポト内戦で消えてしまった伝統織物の「クメール織り」を復活させるべく、日本人の森本喜久男氏が作ったところです。
東京ドーム5個分くらいの森の中に社宅と作業場が点在していて、障がいを持つ人や身寄りのない人など、さまざまな境遇の人たちが助け合いながら生き生きと幸せそうに働いていました。伝統の森のうち、約半分のエリアでは森の再生を行い、残りの半分が開墾され、綿花や桑、藍を栽培する畑や農園、工房・居住区域になっており、自然と共生した生活が営まれています。その光景を見て「ここにこそ働く人たちの幸せの原点がある」「自分の仕事を通して、こんな空気感の場を作りたい」と思いました。
帰国後、私はコーチングやファシリテーション、心理学や東洋哲学、原田メソッド(原田隆史氏が考案した目標達成・自立型人材育成メソッド)などを学び、顧客企業のコンサルティングに取り入れるようになりました。そうして生まれたのが「心のマネジメント」です。働く人たちの心の状態に着目し、1人ひとりが働く喜びや幸せを実感できるような職場環境を実現することが、組織の活性化や生産性の向上、ひいては企業の業績アップと企業価値の向上にもつながっていくことが、多くの実践例を通してわかってきたのです。
 
そして私は2023年9月、新たな挑戦をスタートさせました。一般社団法人自立した人と組織を育成する協会の設立です。この協会では、働く人たちが生き生きと幸せに働ける組織づくりに取り組む社労士の仲間を全国に増やしていくことを目的に掲げています。協会の設立を発表して以降、予想以上に多くの社労士から賛同の声をいただきました。かつての私と同じような問題意識を抱えている社労士が多いこと、「人の心」をしっかりと見て「いい会社」をつくりたいと思っている人が多いことを実感し、とても勇気づけられています。
「社労士はこうあるべき」という枠から自由になれば、社労士は企業や社会に対してまだまだ貢献できることがたくさんあります。志を同じくする仲間と共に、社労士としての可能性を追求していきたい。自立した人と組織の育成を通して、よりよい社会の実現に貢献していきたいと考えています。